事故物件になったアパートのオーナーが取れる選択肢

急いで決める必要はありませんが、選択肢を知っておくと判断がぶれません。
急いで決める必要はありませんが、選択肢を知っておくと判断がぶれません。

主な選択肢は4つ

選択肢向いているケース主な注意点
原状回復して賃貸を続ける建物が比較的新しく、借入れの返済も順調その部屋は告知のうえ募集。家賃が下がることがある
入居者がいるまま一棟で売る経営を続ける負担が大きい、相続の準備をしたい事案を買主に告げる必要がある。価格は利回りで決まる
空室を増やしてから売る建て替えや土地としての売却を考えている立ち退きには正当事由や交渉が必要で、時間と費用がかかる
事故のあった部屋だけ別の使い方をする募集が難しいが、一棟の経営は続けたい倉庫や管理用など、用途によって収入は減る

最初に決めるべきは「経営を続けたいかどうか」

アパートは収益を生む資産です。事故の影響は、多くの場合その部屋が中心で、建物全体の収益がすぐに失われるわけではありません。そのため、まずはオーナー自身が今後も賃貸経営を続けたいかどうかを考えることが出発点になります。年齢や体力、相続の予定、借入れの残高なども含めて、家族と話し合っておきましょう。

どちらを選ぶにしても、先にやることは同じ

賃貸を続ける場合も売る場合も、まずは事故があった部屋の清掃と原状回復、相続人や連帯保証人との連絡、ほかの入居者への配慮が必要です。これらを済ませてから、または並行しながら、続けるか売るかを判断していきます。

アパートで孤独死・事故が起きた直後にオーナーがやること

早めの清掃は、ほかの入居者の暮らしを守ることにもつながります。
早めの清掃は、ほかの入居者の暮らしを守ることにもつながります。

警察・管理会社・相続人への連絡

入居者が亡くなっているのが見つかったら、まず警察に連絡し、警察の確認が終わるまで室内には立ち入らないようにします。その後、管理会社と連携して、亡くなった方の相続人や連帯保証人に連絡します。賃貸借契約は、入居者が亡くなっても自動的には終わらず、相続人に引き継がれます。解約や室内の家財の扱いは、相続人と話し合って進めるのが原則です。国土交通省の「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を使った契約であれば、あらかじめ決めた受任者が手続きを行えます。

特殊清掃と原状回復

発見が遅れた場合は、においや害虫がほかの部屋に広がらないよう、早めに特殊清掃を手配します。原状回復の費用を誰がどこまで負担するかは、契約内容や事案の内容、相続人が相続放棄をしたかどうかによって変わります。考え方は賃貸で孤独死したら損害賠償は誰が払う?で詳しく解説しています。請求の判断が難しい場合は、弁護士に相談してください。

ほかの入居者への配慮

作業車の出入りや、においで、ほかの入居者が事情に気づくこともあります。問い合わせがあったときは、亡くなった方のプライバシーに配慮しつつ、「清掃は専門業者に依頼し、対応を進めている」と事実を短く伝えましょう。不安から退去が続くことを防ぐうえでも、早めの対応と落ち着いた説明が大切です。対応の全体像は大家向け孤独死対応マニュアルにまとめています。

賃貸経営を続ける場合の告知と募集の考え方

告知は「その部屋」が中心。期間の目安もガイドラインで示されています。
告知は「その部屋」が中心。期間の目安もガイドラインで示されています。

賃貸の告知は原則おおむね3年

国土交通省の「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(2021年10月公表)では、自殺や、発見が遅れて特殊清掃などが行われた孤独死について、賃貸では事案の発生(特殊清掃等が行われた場合は発覚)からおおむね3年が経過すれば、原則として告知は不要とされています。ただし、事件性や周知性、社会的な影響が大きい事案は、期間にかかわらず告知が必要とされる場合があります。また、借主から尋ねられた場合は、わかっていることを告げる必要があります。

ほかの部屋の募集には原則影響しない

ガイドラインでは、隣の部屋や、日常生活で通常使わない共用部分での死亡は、原則として告知の対象外とされています。つまり、事故があった部屋以外を募集するときは、原則として告知は必要ありません。ただし、廊下や階段など日常的に使う共用部分で起きた事案は、扱いが異なることがあるため、管理会社に確認しましょう。

事故があった部屋の家賃と募集

事故があった部屋は、告知のうえで家賃を下げて募集するのが一般的です。どのくらい下げるかは、事案の内容、立地、周辺の家賃相場によって変わります。家賃設定や募集の工夫は事故物件の賃貸募集と家賃設定で詳しく解説しています。告知の範囲の考え方は賃貸の告知義務も参考にしてください。

入居者がいるままアパート一棟を売る(オーナーチェンジ)

入居者との賃貸借契約は、そのまま新しいオーナーに引き継がれます。
入居者との賃貸借契約は、そのまま新しいオーナーに引き継がれます。

オーナーチェンジとは

入居者が住んだままの状態で、アパートを別の人に売ることを「オーナーチェンジ」と呼びます。入居者に退去してもらう必要はなく、賃貸借契約は新しいオーナーに引き継がれます。2020年4月1日施行の改正民法(605条の2)では、建物の引き渡しを受けている入居者がいる物件を売った場合、貸主の地位は原則として買主に移り、敷金を返す義務も買主に引き継がれることが明文化されました。実際の取引では、預かっている敷金の額を売買代金から差し引いて精算することが多くあります。

買主に伝えること・渡す資料

  • 事故があった部屋と、事案の内容・時期・行った清掃や原状回復の内容
  • レントロール(各部屋の家賃・契約開始日・敷金の一覧)
  • 賃貸借契約書の写し、管理委託契約の内容
  • 修繕の履歴、設備の不具合、滞納している入居者の有無

一棟を売る場合、事故があった部屋は売買の対象そのものに含まれます。売買では告知が不要になる期間の目安が示されていないため、事案の内容は買主に正直に伝えましょう。告げなかった事実は、契約不適合責任の免責特約があっても免責されません。

入居者への通知

売却が決まったら、新しいオーナーと連名などで、家賃の振込先や管理会社の変更を入居者に知らせます。入居者の同意は原則として不要ですが、混乱を避けるために、わかりやすい案内を心がけましょう。

売り先としては、収益物件を探している個人の投資家に仲介で売る方法と、事故物件の扱いに慣れた買取業者に直接売る方法があります。投資家向けの仲介では、物件情報が広く出回ることがあり、融資の審査で時間がかかる場合もあります。事故のあった部屋が空室のままの場合や、早く確実に売りたい場合は、買取も比べてみるとよいでしょう。

事故物件のアパートの価格は「利回り」で考える

収益物件は、家賃収入と買主が求める利回りから価格が決まります。
収益物件は、家賃収入と買主が求める利回りから価格が決まります。

収益物件の価格の決まり方

アパートのような収益物件は、自分で住むための家と違い、どれだけの家賃収入を生むかを基準に価格が考えられます。よく使われる目安が「表面利回り」で、年間の家賃収入を物件価格で割った割合です。買主は、立地や築年数、空室のリスクなどを考え、「この物件なら何%の利回りがほしい」と判断します。

計算例:事故の影響が価格にどう表れるか

計算例:家賃5万円の部屋が8室あるアパートで、買主が表面利回り10%を求める場合(すべて仮の数字です)。

状況年間家賃収入価格の目安(利回り10%)
全室を通常の家賃で貸している5万円×8室×12か月=480万円4,800万円
事故のあった1室を家賃3.5万円で貸している(5万円×7室+3.5万円)×12か月=462万円4,620万円
事故のあった1室が空室のまま5万円×7室×12か月=420万円4,200万円

このように、事故のあった部屋の家賃や空室の状況が、そのまま価格に反映されます。実際には、事故を理由に買主が求める利回り自体が高くなることもあり、価格への影響は物件ごとに違います。

建物が古い場合は「土地値」も比べる

築年数がかなりたったアパートは、家賃収入から計算した価格より、建物を壊して土地として売った場合の価格(土地値)のほうが高いこともあります。ただし、入居者がいる状態で建物を壊すことはできず、立ち退きの交渉には時間と費用がかかります。利回りで見た価格と土地値の両方を比べて判断しましょう。周辺の取引価格は国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で調べられます。

アパートを売るときの注意点とよくある誤解

思い込みで動く前に、契約や法律の確認をしておきましょう。
思い込みで動く前に、契約や法律の確認をしておきましょう。

誤解1:「入居者を全員退去させないと売れない」

入居者がいるままでも、オーナーチェンジとして売ることができます。むしろ、入居者が多いほど家賃収入があるため、収益物件としては評価されやすくなります。貸主の都合で退去を求めるには、借地借家法上の正当事由が必要で、立ち退き料の交渉が必要になることもあります。退去を前提に進める場合は、弁護士に相談しながら慎重に進めてください。

誤解2:「3年たてば売るときも告知はいらない」

ガイドラインの「おおむね3年」は、賃貸の場合の目安です。アパートを売る(売買)ときは、告知が不要になる期間の目安は示されていません。賃貸の募集では告知していない部屋でも、一棟を売るときには買主に伝えるべき事情になる場合があります。

借入れが残っている場合の確認

アパートローンが残っている場合は、売却代金で残りを返済し、抵当権を外す必要があります。売却価格が残りの借入れを下回りそうなときは、早めに金融機関に相談しておきましょう。また、売って利益が出た場合は譲渡所得税がかかります。売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば税率は20.315%、5年以下なら39.63%です。具体的な税額は税理士に確認してください。

次に何をすればいいか:続けるか売るかを数字で比べる

賃貸を続けた場合と売った場合、両方の数字を並べてみましょう。
賃貸を続けた場合と売った場合、両方の数字を並べてみましょう。

比べるための3つの数字

  1. 賃貸を続けた場合の手取り:家賃収入から、原状回復費・管理費・返済・税金を引いた金額
  2. 今売った場合の手取り:売却価格から、借入れの返済・敷金の精算・税金を引いた金額
  3. 建物の今後の修繕費:外壁・屋根・給排水管などで、近いうちにかかりそうな費用

この3つを並べると、続けるか売るかの判断がしやすくなります。相続の予定がある場合は、子どもの世代が経営を引き継げるかどうかも大切な判断材料です。

売却を考えるなら、まずは査定を

入居者がいる状態でいくらで売れるかを知っておくと、賃貸を続ける場合でも「いざとなればこの金額で手放せる」という安心材料になります。査定の仕組みは事故物件の査定で解説しています。

株式会社GEEZのご案内

株式会社GEEZは、大阪府全域で事故物件・孤独死物件を当社が直接買主となって買い取っています。アパートの一棟や、事故があった部屋を含む収益物件についてもご相談ください。特殊清掃前や家財が残った状態でも相談でき、契約不適合責任は免責で買い取ります。広告を出さずに進めるため、入居者や近隣に知られる心配も抑えられます。査定・相談は無料、秘密厳守です。相談フォームまたはお電話(06-7777-4333/10:00〜19:00、水・日定休)でご連絡ください。