事故物件の査定額が決まる仕組み

基本の考え方は「通常の相場-影響-費用」
事故物件の査定は、おおまかに次の3つの段階で考えます。
- 通常の相場:事故がなかった場合に、その物件がいくらで売れるか
- 事案による影響:事案の内容や時期によって、買主が感じる抵抗の大きさを反映する
- 必要な費用:特殊清掃、残置物の撤去、修繕やリフォーム、解体など、買主が負担することになる費用
買取の場合は、さらに業者が再販売や賃貸までにかかる期間や経費、利益を見込んで価格を出します。そのため、同じ物件でも、仲介で売り出す価格の目安と、買取の価格には差が出ます。
計算例:事故がなければ2,000万円で売れる見込みの一戸建てで、事案による影響を300万円、特殊清掃・残置物撤去・修繕の費用を200万円と見込んだ場合(すべて仮の数字)、2,000万円-300万円-200万円=1,500万円が、仲介で考えるときの一つの目安になります。買取では、ここから業者の経費や期間の分が差し引かれた金額が提示されるのが一般的です。この組み立てを知っておくと、業者に「どの部分をいくらと見たのか」を具体的に質問できます。
事案の内容で影響は大きく違う
病死や老衰などの自然死で早期に発見された場合は、国土交通省のガイドライン上、原則として告知不要とされ、価格への影響も小さいことが多いと考えられます。一方、発見が遅れて特殊清掃が必要になった場合、自殺や事件があった場合は、影響が大きくなりやすくなります。どのくらい下がるかは、事案の内容や立地、物件の種類で大きく変わるため、一律の割合はありません。考え方の目安は事故物件はどれくらい安くなる?をご覧ください。
立地や物件そのものの条件も大きい
駅に近い、人気のある地域、土地の形がよいといった条件は、事故物件であっても査定額を支えます。反対に、建物が古い、再建築ができない、管理費の滞納があるといった条件は、事故とは別に査定額を下げる要因になります。査定額は「事故の影響」だけで決まるわけではないことを知っておきましょう。
査定の方法:取引事例・収益・土地値で考える

自宅用の物件は「取引事例」が中心
一戸建てやマンションの一室のように、自分で住む人が買う物件は、近くで似た物件がいくらで売れたか(取引事例)を基準に考えるのが一般的です。マンションは同じ建物の中の事例が多く、比べやすいのが特徴です。周辺の取引価格は、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で誰でも調べられます。自分でも一度見ておくと、提示された査定額が通常の相場からどのくらい離れているかがわかります。
アパートなど収益物件は「家賃収入」から考える
アパートや貸している部屋のように、家賃収入を得るための物件は、年間の家賃収入と、買主が求める利回りから価格を考える方法(収益還元の考え方)がよく使われます。事故のあった部屋の家賃が下がったり空室になったりすると、その分が価格に反映されます。詳しくは事故物件のアパートを売却する選択肢で解説しています。
古い一戸建ては「土地値」から考える
築年数がかなりたった木造住宅は、建物の価値がほとんど評価されず、土地の価格を中心に考えることが多くあります。この場合、建物を解体する費用を差し引いて査定されることもあります。解体の考え方は事故物件は解体して更地で売るべき?をご覧ください。
机上査定と訪問査定の違い

机上査定:資料と情報だけで出す目安
机上査定(簡易査定)は、住所や広さ、築年数、事案の内容などの情報と、周辺の取引事例から、おおよその金額を出す方法です。電話やメール、写真で依頼でき、現地に行く必要がないため、近所に知られる心配もほとんどありません。ただし、室内の状態を見ていないため、あくまで目安として受け止めましょう。
訪問査定:現地を見て出す具体的な金額
訪問査定は、担当者が実際に物件を見て、室内の傷み、におい、残っている家財の量、建物の不具合、周辺の環境などを確かめたうえで金額を出す方法です。事故物件では、室内の状態によって必要な費用が大きく変わるため、訪問査定の金額のほうが実態に近くなります。買取の場合は、訪問査定のあとに出る金額が、実際の買取価格のもとになります。
どちらから始めればいいか
| こんなとき | おすすめ |
|---|---|
| 相続するか放棄するかの判断材料がほしい | まず机上査定でおおよその価値を知る |
| 売ることはほぼ決めている | 訪問査定で具体的な金額を出してもらう |
| 遠方に住んでいて現地に行けない | 机上査定から始め、鍵の預け方を相談する |
| 特殊清掃前で室内に入りにくい | 状況を伝えたうえで、訪問の方法を業者と相談する |
なお、査定を受けるだけでは財産の処分にあたらないため、相続放棄を考えている段階でも、家の価値を知る目的で査定を頼むことはできます。
事故物件の査定時に伝えること

伝えておきたい7つの情報
- 事案の内容(病死・孤独死・自殺など)と、わかる範囲の時期
- 亡くなっていた場所(どの部屋か、浴室か、ベランダかなど)
- 発見までのおおよその日数と、特殊清掃を行ったかどうか
- 行った清掃・リフォームの内容(見積書や報告書があればその写し)
- 家財や遺品がどのくらい残っているか
- 雨漏り・シロアリ・設備の故障など、知っている不具合
- 相続人の人数と、相続登記を済ませているかどうか
正直に伝えることが自分を守る
事案や不具合を隠して査定を受けても、あとで発覚すれば金額は見直され、契約が白紙になることもあります。さらに、売ったあとに発覚した場合は、契約の解除や損害賠償を求められるおそれがあります。個人の売主は契約不適合責任を特約で免責にできますが、知りながら告げなかった事実は免責されません。最初から正確に伝えておくことが、査定額のぶれを小さくし、売ったあとの心配を減らすいちばんの方法です。
わからないことは「わからない」でよい
離れて暮らしていた親の家などでは、発見までの日数や建物の状態がわからないことも多いものです。わからないことは推測で答えず、「わからない」と伝えてください。警察から聞いた内容や、清掃業者の報告など、手元にある情報を伝えてもらえれば十分です。告知の範囲については事故物件の売却と告知義務も参考にしてください。
事故物件の査定に必要な書類チェックリスト

査定の段階であると便利な書類
| 書類 | わかること・入手先 |
|---|---|
| 固定資産税の納税通知書・課税明細書 | 所在地、面積、評価額。毎年春ごろ市町村から届く |
| 登記事項証明書(登記簿謄本) | 名義人、面積、抵当権の有無。法務局で取得できる |
| 登記済証(権利証)または登記識別情報 | 所有者であることの確認。売買の手続きでも必要 |
| 建物の図面・建築確認済証・検査済証 | 間取り、建築時期、建築確認を受けた時期 |
| 測量図・境界確認書 | 土地の正確な面積と隣地との境界 |
| 特殊清掃・リフォームの見積書や報告書 | 行った対応の内容と範囲 |
| マンションの場合:管理規約・管理費の請求書 | 管理費・修繕積立金の額と滞納の有無 |
相続した物件の場合に追加で必要になるもの
相続した物件を売るには、原則として相続登記を済ませて相続人の名義にする必要があります。2024年4月1日から相続登記は義務になり、取得を知った日から3年以内に申請しないと、正当な理由がない場合は10万円以下の過料の対象になります。査定の段階では登記が済んでいなくてもかまいませんが、売却までには、戸籍謄本や遺産分割協議書などをそろえて登記を行います。手続きは司法書士に相談すると確実です。
書類がそろわなくても相談はできる
権利証が見つからない、図面がない、といった場合でも、査定は受けられます。住所がわかれば、登記事項証明書は法務局で取得でき、業者が調べられる情報も多くあります。売却全体の流れと契約・決済の段階で必要になる書類は事故物件の売却の流れと必要書類にまとめています。
事故物件の査定でよくある誤解と注意点

誤解1:「査定額=必ず売れる金額」
仲介の査定額は、「このくらいで売れそう」という見込みで、その金額で売れることを約束するものではありません。高い査定額で媒介契約を結んだものの、売れずに値下げを繰り返す、ということもあります。一方、買取の査定額は、業者自身が買う金額なので、条件がそろえば実際の売却価格に近くなります。どちらの金額なのかを確かめてから比べましょう。
誤解2:「査定額が業者でこんなに違うのはおかしい」
事故物件は一般の物件より取引の事例が少なく、業者ごとの得意分野や、清掃・リフォームにかかる費用の見込み方も違うため、査定額に差が出やすくなります。大切なのは金額の差そのものより、その金額の根拠を説明してもらえるかです。差し引いた費用の内訳や、比べた取引事例を聞いてみてください。業者の選び方は事故物件の買取業者の選び方で解説しています。
注意:査定のあとの大幅な減額
机上査定で高い金額を伝え、訪問のあとや契約の直前になって大きく下げる、という進め方には注意が必要です。訪問査定のあとに出た金額が最終なのか、まだ変わる可能性があるのか、変わるならどんな場合かを、書面やメールで確認しておきましょう。また、査定を受けたからといって売る義務はありません。納得できなければ断ってかまいません。
次に何をすればいいか:まずは机上査定で目安を知る

今日からできること
- 固定資産税の納税通知書など、住所と面積がわかる書類を探す
- 事案の時期や清掃の状況を、わかる範囲でメモにまとめる
- 国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で周辺の取引価格を見ておく
- 2〜3社に机上査定を頼み、金額と根拠を比べる
相続・税金のことは専門家にも
相続放棄をするかどうか、売ったときの税金がいくらになるかは、査定額と合わせて考える必要があります。相続のことは弁護士・司法書士、税金のことは税理士に確認しましょう。税金の基本は事故物件の売却にかかる税金で解説しています。
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