親が認知症だと家は売れない?結論は「本人の判断能力しだい」

判断能力がない人の契約は無効になる
2020年4月1日施行の改正民法で、意思能力(自分の行為の結果を理解する力)がない状態でした契約は無効と明記されました。不動産の売却は金額も大きく、内容も複雑です。売主である親が「家を売る」「いくらで売る」「売ったら住めなくなる」ことを理解できていなければ、売買契約そのものが無効になるおそれがあります。そのため、不動産会社や司法書士は、売主本人の意思と判断能力を必ず確認します。
「認知症=売れない」ではない
認知症と診断されていても、症状が軽く、売却の内容をきちんと理解して自分で判断できる場合は、本人が売主として売却できることがあります。ただし、その判断は家族だけでするものではありません。登記を担当する司法書士が本人と面談して意思を確認し、難しいと判断すれば手続きは進められません。「子どもが代わりにハンコを押す」「委任状を書いてもらう」という方法は、本人が理解していなければ使えないと考えてください。
判断能力の程度と取れる方法
| 親の状態 | 考えられる方法 |
|---|---|
| 内容を理解して自分で判断できる | 本人が売主として売却(司法書士が意思確認) |
| 判断能力が不十分 | 成年後見制度(後見・保佐・補助)を利用し、後見人等が手続き |
| まだ元気で、将来に備えたい | 任意後見契約や家族信託などを検討 |
判断能力の程度は、日によって波があることもあります。調子のよい日に署名してもらえば大丈夫、というものではありません。あとから「契約の時点で判断能力がなかった」と争われると、売買が無効になり、買主にも迷惑がかかります。迷ったときは、主治医に現在の状態を聞き、司法書士に早めに相談するのが安全です。
成年後見制度とは?後見・保佐・補助の違い

法定後見の3つの種類
すでに判断能力が衰えている方のための制度を法定後見といい、本人の状態に応じて3つに分かれます。
| 種類 | 本人の状態 | 選ばれる人 |
|---|---|---|
| 後見 | 判断能力が欠けているのが通常の状態 | 成年後見人 |
| 保佐 | 判断能力が著しく不十分 | 保佐人 |
| 補助 | 判断能力が不十分 | 補助人 |
後見人は本人に代わって財産を管理し、契約をします。保佐人・補助人が不動産の売却を代わりに行うには、家庭裁判所から「代理権」を与えられている必要があります。
後見人は家族が選ばれるとは限らない
申立てのときに、子どもなどを後見人の候補者として書くことはできます。しかし、誰を後見人にするかは家庭裁判所が決めます。財産の内容や家族の状況によっては、弁護士・司法書士などの専門職が選ばれることもあります。専門職が後見人になった場合は、家庭裁判所が決めた報酬が本人の財産から支払われます。
「売ったら終わり」ではない
成年後見制度は、家を売るためだけに使う制度ではありません。一度始まると、原則として本人が亡くなるまで続きます。家の売却が終わったからといって、やめることはできません。後見人は、売却後も本人の財産を管理し、定期的に家庭裁判所へ報告します。家族にとっては、親のお金を自由に使えなくなるという面もあるため、制度の性質を理解したうえで申し立てることが大切です。
成年後見の申立ての流れと費用

申立ての流れ
- 申立先を確認:本人の住所地を受け持つ家庭裁判所に申し立てます
- 書類をそろえる:申立書、医師の診断書、本人の戸籍や住民票、財産や収支がわかる資料など
- 申立て・面接:家庭裁判所が申立人や候補者から事情を聞きます
- 必要に応じて鑑定:本人の判断能力を医師が詳しく調べることがあります
- 審判:家庭裁判所が後見等の開始と後見人等を決めます
申立てができるのは、本人、配偶者、4親等内の親族などです。必要書類は裁判所ごとに案内があるため、申立先の家庭裁判所のページで確認してください。
医師の診断書は、家庭裁判所が用意している成年後見制度用の書式で書いてもらうのが一般的です。また、一度申し立てると、家庭裁判所の許可がなければ取り下げられないとされています。「希望した家族が後見人に選ばれなかったからやめたい」という理由では取り下げにくいため、申し立てる前に家族でよく話し合っておきましょう。
申立てにかかる費用
裁判所の案内では、後見開始の申立手数料は収入印紙800円分、これとは別に登記手数料として収入印紙2,600円分が必要です。郵便切手の額は裁判所ごとに違います。医師による鑑定が行われる場合は、その費用もかかり、金額の目安は裁判所によって異なります。書類の準備を司法書士や弁護士に依頼すれば、その報酬もかかります。
時間に余裕を持つ
申立てから後見が始まるまでには、一定の時間がかかります。そのあと家を売るときには、後で説明する家庭裁判所の許可も必要です。「すぐに売りたい」と思っても、手続きが全部終わるまでには時間がかかると考えてください。その間も、空き家の固定資産税や管理の負担は続きます。空き家を放置するリスクは事故物件の空き家を放置するリスクで解説しています。
親の住まいを売るには家庭裁判所の許可が必要

居住用不動産の処分には許可がいる
成年後見人が、本人に代わって本人の居住用の不動産を売るには、家庭裁判所の許可が必要です(民法859条の3)。裁判所の案内では、今は施設や病院にいても、退院・退所後に戻る可能性がある家も対象になるとされています。売却のほか、抵当権の設定、賃貸、建物の取り壊しも「処分」に含まれます。許可なく売った場合、その売買は無効です。
許可の申立てのタイミングと費用
申立てをするのは後見人で、申立先は後見開始の審判をした家庭裁判所です。申立手数料は収入印紙800円分です。一般的には、買主と売却価格がほぼ決まった段階で申し立てます。家庭裁判所は、売る必要があるか、価格が適正か、本人の今後の住まいはどうするかなどを見て判断します。そのため、売買契約は「家庭裁判所の許可が出ること」を条件にして結ぶのが一般的です。
事故物件の場合は「なぜこの価格か」の説明が大切
事故があった家は、相場より安くしか売れないことが多くあります。家庭裁判所に「この価格は適正」と理解してもらうには、事故の内容や室内の状態、査定書などで根拠を示すことが大切です。複数の査定を取って比べておくと、説明しやすくなります。事故物件の価格の考え方は事故物件はどれくらい安くなる?、査定の仕組みは事故物件の査定をご覧ください。
なお、本人が住んでいたことがなく、今後も住む予定のない不動産(たとえば親が所有する貸家など)は、居住用不動産にはあたらないため、この許可の対象外とされています。ただし、後見人は本人の利益のために財産を管理する立場なので、売る必要性や価格が適正かを説明できるようにしておく必要があります。どちらにあたるか迷うときは、家庭裁判所に事前に相談してください。
事故物件になった実家と認知症の親:よくある状況と注意点

たとえば、父が亡くなり母が認知症という場合
たとえば、父が自宅で亡くなって発見が遅れ、母は認知症で施設に入っている、というような場合を考えます。家の名義が父なら、まず相続が起き、母と子どもたちが相続人になります。このとき、遺産分割の話し合いには母も参加する必要があり、母の判断能力が十分でなければ、後見人が母の代わりに参加します。後見人は母の利益を守る立場なので、「家は子どもが全部相続する」といった母に不利な分け方には、原則として応じにくくなります。
相続放棄や登記の期限にも注意
相続放棄は、相続人になったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します。相続人がすでに成年被後見人である場合、この期間は成年後見人が相続の開始を知った時から数えるとされていますが(民法917条)、具体的な扱いは司法書士・弁護士に確認してください。また、相続登記は2024年4月1日から義務になり、取得を知った日から3年以内に行う必要があります。名義が亡くなった方のままでは売れないため、売却の前提として相続登記が必要です。詳しくは相続登記をしていない事故物件を売る方法をご覧ください。
元気なうちにできる備え
まだ親の判断能力がしっかりしているなら、任意後見契約(将来に備えて、後見人になってほしい人と公正証書で契約しておく制度)や、家族信託(家族に財産の管理や処分を任せる契約)などの備えを検討できます。どの方法が合うかは家族構成や財産の内容で違うため、司法書士・弁護士に相談してください。大切なのは、「まだ大丈夫」と思っているうちに家族で話し合っておくことです。
また、後見が始まった後は、特殊清掃や遺品整理の費用を親の財産から払う場合も、後見人の判断が必要になります。家族が立て替えた費用をあとで精算するときも、領収書や見積書がないと説明できません。清掃や片付けの記録は、手続きのためにもきちんと残しておきましょう。
次に何をすればいい?手続きと売却の段取りを並行して考える

まず確認したいこと
- 家の名義は誰か(親本人か、亡くなった家族か)。登記事項証明書で確認
- 親の判断能力の状態。主治医に相談し、必要なら診断書を依頼
- 相続が起きている場合は、相続人が誰か、相続放棄の期限はいつか
- 家の状態(特殊清掃の要否、家財の量)と、固定資産税の納税通知書
成年後見制度について何から始めればよいかわからない場合は、親が住む地域の地域包括支援センターや、市区町村の成年後見に関する相談窓口に聞くこともできます。家族だけで抱え込まず、使える窓口を早めに頼ってください。
売却価格の目安を早めに知っておく
後見の申立てや家庭裁判所の許可では、「家をいくらで売れるのか」という情報が必要になります。株式会社GEEZは、大阪府全域で事故物件・孤独死物件・相続物件の買取を行っており、当社が直接買主になります。家庭裁判所の許可を条件とした契約の段取りも含めてご相談いただけます。特殊清掃の前でも、家財が残ったままでも査定でき、古物商許可があるので家財の回収も行えます。
相談は無料・秘密厳守
「後見の申立てをするか迷っている」「まず家の価値だけ知りたい」という段階でもかまいません。査定・相談は無料で、秘密は厳守します。チラシやポータルサイトに載せないため、近所に知られずに進められます。お電話(06-7777-4333、10:00〜19:00、水・日定休)か相談フォームからご連絡ください。









