賃貸の孤独死対策の基本:大家ができるのは「早く気づく」と「後で困らない」

なぜ「早く気づく」ことが大切なのか
入居者が部屋で亡くなっても、早く発見されれば、室内への影響は小さく済むことが多くあります。国土交通省の「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」では、老衰や病死などの自然死は原則として告知不要とされています。一方で、長期間発見されず、特殊清掃や大規模なリフォームが必要になった場合は告知の対象になります。つまり、発見までの時間が、その後の原状回復費用や家賃、空室期間を大きく左右します。告知の考え方は孤独死は事故物件になる?で詳しく解説しています。
「後で困らない」ための備えとは
入居者が亡くなると、賃貸借契約は自動的には終わらず、借りる権利は相続人に引き継がれます。相続人が見つからない、相続人が相続放棄をした、という場合、契約の解除や部屋に残った家財の処分を誰ができるのかが問題になります。大家が勝手に家財を処分すると、あとで相続人とトラブルになるおそれがあります。こうした事態に備えて、入居時の契約で「亡くなった後に誰が何をするか」を決めておくことが大切です。
対策の全体像
| 分野 | 主な対策 |
|---|---|
| 契約 | 残置物モデル契約条項の活用、緊急連絡先の確認、保証の整備 |
| 見守り | 定期連絡、センサーや見守りサービス、地域の支援機関との連携 |
| 保険 | 家主向けの孤独死保険、入居者の家財保険の特約の確認 |
| 受け入れ方 | 居住支援法人・居住サポート住宅の活用、入居者との関係づくり |
入居時の契約で備える:残置物モデル契約条項と保証

残置物の処理等に関するモデル契約条項
2021年6月、国土交通省と法務省は「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を公表しました。これは、入居者が亡くなった場合に備えて、契約の解除や部屋に残った家財の処理を任せる人(受任者)を、入居時にあらかじめ決めておくための契約の雛形です。受任者には、入居者の推定相続人のほか、居住支援法人や管理業者などの第三者がなることが想定されています。大家自身が受任者になることは、利害がぶつかるおそれがあるため避けるのが望ましいとされています。
モデル契約条項でできること・注意点
- 入居者が亡くなった後、受任者が賃貸借契約を解除できる
- 受任者が、あらかじめ決めた方法で家財を処理できる(形見として残す物の指定も可能)
- 主に単身の高齢者の入居を想定したもので、すべての入居者に一律に使うものではない
- 入居者に内容をよく説明し、納得したうえで結んでもらうことが前提
具体的な条文や使い方は、国土交通省のページで公開されています。導入するときは、管理会社や弁護士と相談して進めてください。モデル契約条項を使っていなかった場合、入居者が亡くなった後は相続人を探して契約の解除や家財の引き取りを相談することになり、相続人が見つからない、全員が相続放棄をした、というときは手続きに長い時間がかかることがあります。その間は次の募集もできないため、入居時の備えの差が大きく出る部分です。
緊急連絡先と保証の整備
入居時には、すぐに連絡が取れる緊急連絡先を必ず確認し、更新のたびに変わっていないか確かめます。保証については、2020年4月1日以降に結んだ賃貸借契約で、個人が連帯保証人になる場合は、保証の上限額(極度額)を契約書に定めないと保証が無効になります。身寄りが少ない方の場合は、家賃債務保証会社の利用を組み合わせるのが一般的です。保証会社によって、亡くなった後の原状回復費用や残置物の処理費用まで対象にするかが違うため、内容を確認しておきましょう。損害賠償を誰が負担するかは賃貸で孤独死したら損害賠償は誰が払う?で解説しています。
見守りで早く気づく:大家・管理会社・地域でできること

大家・管理会社が日常でできること
特別な機器がなくても、日々のちょっとした変化に気づくことで、異変を早く知ることができます。
- 家賃の引き落としや振込が遅れたときに、すぐ電話する
- 郵便受けに郵便物やチラシがたまっていないか、巡回時に確認する
- 夜になっても部屋の明かりがつかない、洗濯物が出しっぱなし、といった変化に気を配る
- 定期的なあいさつや電話で、入居者と顔の見える関係をつくっておく
大切なのは、「何かおかしい」と感じたときの連絡の順番を決めておくことです。まず本人に電話、つながらなければ緊急連絡先、それでも確認できなければ警察に相談する、という流れを管理会社と共有しておきましょう。また、入居時に「しばらく留守にするときは一声かけてください」とお願いしておくと、旅行や入院による不在と、異変とを見分けやすくなります。
見守りサービス・機器を使う
電気やガス、水道の使用状況、室内のセンサー、電球の点灯などで生活の様子を確認する見守りサービスがあります。定期的に電話や訪問で安否を確かめるサービスもあります。大家が導入して費用を負担するか、入居者に案内して使ってもらうかは物件によって違います。どれを選ぶにしても、入居者のプライバシーに配慮し、同意を得たうえで使うことが前提です。サービスの種類と選び方は孤独死を防ぐ見守りサービスで解説しています。
地域の支援機関とつながる
高齢の入居者の生活に不安を感じたときは、地域の地域包括支援センターに相談できます。介護や福祉のサービスにつなげてもらえれば、定期的に人が訪ねてくる環境ができ、結果として見守りにもなります。また、住宅に困っている方の入居や生活を支援する居住支援法人と連携する方法もあります。大家だけで見守りを抱え込まず、地域の力を借りることが長続きのコツです。
保険で備える:孤独死保険と入居者の家財保険

家主向けの孤独死保険
大家が加入する孤独死保険(家主型)は、部屋で入居者が亡くなった場合に、原状回復の費用や、空室・家賃を下げたことによる損失などを補償するものが一般的です。補償の範囲や上限、対象になる死因、支払いの条件は保険会社や商品によって大きく違います。加入する前に、どのような場合に、何が、いくらまで補償されるのかを必ず確認してください。保険の種類と選び方は孤独死保険とは?で解説しています。
入居者の家財保険の特約も確認する
入居者が加入する家財保険(借家人賠償責任保険を含むもの)の中には、入居者が亡くなった場合の原状回復費用や遺品整理費用を補償する特約がついているものもあります。入居時に加入してもらう保険の内容を、管理会社と一緒に確認しておくと安心です。特殊清掃の費用が保険で払えるかどうかは特殊清掃は保険で払える?で解説しています。
保険だけに頼らない
保険は、万一のときにお金の面を支えるものです。しかし、発見が遅れれば、においや害虫などで他の入居者や近隣にも影響が広がり、保険では補えない信頼の低下や退去につながることもあります。保険はあくまで最後の備えと考え、見守りや契約の整備と組み合わせることが大切です。また、保険金を請求するときは、警察の対応の記録、特殊清掃や原状回復の見積書・領収書、室内の写真などが必要になることが多いため、記録を残す習慣をつけておきましょう。
高齢者の入居を受け入れるときの考え方と注意点

「断る」より「備えて受け入れる」
高齢の単身者は今後も増えていきます。孤独死を心配して一律に入居を断ると、空室が長引く原因にもなります。契約の備え、見守り、保険を組み合わせれば、リスクを抑えながら受け入れることができます。2025年10月1日には改正住宅セーフティネット法が施行され、居住支援法人などが大家と連携して安否確認・見守りや福祉サービスへのつなぎを行う「居住サポート住宅」の制度が始まりました。あわせて、入居者からの委託にもとづき、居住支援法人が残置物の処理などを行えるようになっています。制度の詳細は国土交通省の住宅セーフティネット制度のページで確認してください。
異変を感じても、合鍵で一人で部屋に入らない
連絡が取れない入居者がいるとき、心配のあまり大家が合鍵で部屋に入りたくなることがあります。しかし、中で亡くなっている場合、現場の状況を変えてしまうおそれがあり、入居者が無事だった場合にはプライバシーの問題にもなります。まず緊急連絡先に連絡し、それでも確認できなければ警察に相談して、立ち会いのもとで確認するのが基本です。疑いがあるときの通報先は孤独死が疑われるときの通報先で解説しています。
入居者の個人情報と尊厳に配慮する
見守りのために集めた情報や、緊急連絡先などの個人情報は、目的以外に使わないよう管理します。また、ほかの入居者や近隣に、特定の入居者の健康状態などを話すことは避けてください。孤独死対策は、入居者を監視することではなく、安心して暮らしてもらうための仕組みづくりだという意識が大切です。
次に何をすればいい?もしものときの対応と、物件の今後を考える

今の契約と保険を見直す
- 入居者全員の緊急連絡先が最新かを確認する
- 連帯保証の極度額の記載、保証会社の補償内容を確認する
- 単身高齢者の新規契約で、残置物モデル契約条項を使えるか管理会社と検討する
- 家主型の孤独死保険、入居者の家財保険の特約内容を確認する
- 異変があったときの連絡の順番を、管理会社と共有する
もし孤独死が起きてしまったら
万一、入居者が部屋で亡くなった場合は、警察の対応、相続人への連絡、残置物の扱い、原状回復、再募集と、やることが多くあります。手順は大家向け孤独死対応マニュアルでまとめています。特殊清掃や原状回復の範囲は特殊清掃と原状回復の違いも参考にしてください。
物件を手放す選択肢も含めてご相談ください
孤独死があった後、「もう賃貸経営を続けるのは負担が大きい」と感じる大家さんもいます。株式会社GEEZは、大阪府全域で事故物件・孤独死物件の買取を行っており、当社が直接買主になります。特殊清掃の前でも、家財が残ったままでもご相談いただけ、契約不適合責任は免責で買い取ります。ポータルサイトなどに載せないため、ほかの入居者や近隣に知られずに進められます。査定・相談は無料・秘密厳守です。お電話(06-7777-4333、10:00〜19:00、水・日定休)か相談フォームからご連絡ください。









