事故物件の告知義務違反に時効はある?全体像

「告知義務の期間」と「責任追及の期間」は別の話です。
「告知義務の期間」と「責任追及の期間」は別の話です。

2つの「期間」を区別する

事故物件の「期間」には、意味の違う2つの話があります。

期間の種類内容
告知が必要な期間事案からどれくらいの間、告知が必要か(賃貸はおおむね3年、売買は目安なし)
責任を追及できる期間告知しなかったことが後でわかった場合、買主・借主がいつまで責任を問えるか

1つめは「いつまで伝える必要があるか」、2つめは「伝えなかった場合に、いつまで責任を問われるか」です。この記事で扱うのは、2つめの「責任を追及できる期間」です。告知が必要な期間は事故物件の告知義務は何年で消える?で解説しています。

責任追及の期間は、責任の種類ごとに違う

告知義務違反で問われる責任には、主に契約不適合責任と、説明義務違反などによる損害賠償(不法行為など)があります。それぞれに期間のルールがあり、どの責任で請求するかによって、期限の考え方が変わります。責任の内容そのものは事故物件の告知義務違反とはで説明しています。

結論:「時効だから大丈夫」と考えるのは危険

期間の数え始め(起算点)は「知った時」とされるものが多く、買主・借主が事案を知った時点から期間が動き始めます。そのため、売ってから何年経っていても、買主が最近知ったのであれば責任を問われる可能性があります。期間の制限は、隠すことを正当化するものではありません。

契約不適合責任の期間:知った時から1年以内の「通知」

改正民法では、1年以内に必要なのは「通知」です。
改正民法では、1年以内に必要なのは「通知」です。

買主は、不適合を知った時から1年以内に通知する

改正民法では、引き渡された物件の種類や品質が契約の内容に合っていない場合、買主はその不適合を知った時から1年以内に売主へ通知しなければ、原則として責任を追及できなくなるとされています。過去の自殺など、心理的な事情も「不適合」に当たると考えられています。仕組みは事故物件の契約不適合責任で詳しく解説しています。

改正前との違い:「権利行使」から「通知」へ

改正前の瑕疵担保責任では、買主は知った時から1年以内に、損害賠償の請求など具体的な権利行使をする必要がありました。改正後は、不適合の種類やおおよその範囲を売主に通知すれば足りるとされ、買主にとって負担が軽くなっています。なお、2020年4月1日より前に結ばれた契約には、原則として改正前の民法が適用されます。

売主が知っていた場合は、1年の制限がかからない

この1年の通知期間には例外があります。売主が引き渡しの時に不適合を知っていた場合、または重大な不注意で知らなかった場合は、1年以内に通知しなくても責任を追及できるとされています。事故物件の事実を知りながら告げなかった売主は、この例外に当たる可能性が高い点に注意が必要です。

消滅時効:知った時から5年、行使できる時から10年

通知期間とは別に、権利そのものの時効があります。
通知期間とは別に、権利そのものの時効があります。

改正民法の消滅時効の原則

改正民法では、お金の請求などの権利(債権)は、次のいずれか早い方が来た時に時効で消えるのが原則です。

  • 権利を行使できることを知った時から5年
  • 権利を行使できる時から10年

契約不適合責任にもとづく請求も、この消滅時効の対象になります。1年以内に通知をしても、それで時効が止まるわけではない点に注意が必要です。

10年の数え始めはいつ?

契約不適合責任では、「権利を行使できる時」は一般に物件の引き渡しの時と考えられています。つまり、買主が事故物件だと知らないままでも、引き渡しから10年が経つと、原則として時効により請求できなくなる、という考え方です。ただし、どの時点を起算点とするかは事情によって争いになることがあるため、具体的には弁護士に確認してください。

時効は自動的に完成するわけではない

時効は、期間が過ぎたことで責任を免れる側が「時効を主張する(援用する)」ことで効果が生じます。また、請求を受けたり、裁判を起こされたりすると、時効の完成が一時的に止まったり、期間が振り出しに戻ったりすることがあります(完成猶予・更新)。「〇年経ったから終わり」と自分で判断せず、専門家に相談しましょう。

期間のルールをまとめると

ルール期間の目安(一般論)
契約不適合の通知買主が不適合を知った時から1年以内(売主が知っていた・重大な不注意で知らなかった場合は制限なし)
消滅時効知った時から5年、行使できる時から10年のいずれか早い方
不法行為損害と加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年

表はあくまで原則です。特約の内容、契約日、誰が売主かなどで結論は変わります。

不法行為・説明義務違反の期間と、業者の責任

契約不適合責任とは別のルートで請求されることもあります。
契約不適合責任とは別のルートで請求されることもあります。

不法行為による損害賠償の期間

事故物件であることを隠して契約させたとして、不法行為を理由に損害賠償を求められる場合もあります。不法行為による損害賠償の請求権は、一般に損害と加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で時効になるとされています(人の生命・身体を害する場合は、知った時から5年)。

どの責任で請求されるかで期間が変わる

同じ「告知しなかった」という事実でも、契約不適合責任として請求されるか、不法行為や説明義務違反として請求されるかで、期間のルールが変わります。買主・借主の側は、使える期間の長いルートで請求することもあります。そのため、ある責任の期間が過ぎていても、別の理由で責任を問われる可能性がある点に注意が必要です。

宅建業者が売主の場合

不動産会社(宅建業者)が自ら売主になる場合は、宅地建物取引業法により、契約不適合責任の通知期間を引き渡しから2年以上とする特約を除いて、民法より買主に不利な特約は無効とされています。個人が売主の場合とはルールが違います。仲介した不動産会社が説明すべきことを説明しなかった場合、不動産会社自身が責任を問われることもあります。

特約で期間は変えられる?個人の売主の免責特約

特約は便利ですが、「知りながら告げなかった事実」には効きません。
特約は便利ですが、「知りながら告げなかった事実」には効きません。

個人の売主は、責任の期間を短くしたり免責にしたりできる

個人どうしの売買では、契約書の特約で、契約不適合責任を負う期間を「引き渡しから3か月」のように短くしたり、責任を負わない(免責)としたりすることができます。中古住宅の売買では、こうした特約が入ることが少なくありません。建物が古く、設備の故障などを売主が把握しきれないことが多いためです。特約の内容は契約書に書かれるため、売主・買主ともに契約前に必ず確認しておきましょう。

知りながら告げなかった事実は、特約があっても免責されない

ただし、民法では、売主が知りながら告げなかった事実については、責任を負わない特約があっても免責されないとされています。つまり、事故物件であることを知っていながら黙って売った場合、期間を短くする特約や免責特約があっても、責任を問われる可能性があります。

計算例で考える

計算例:期間のイメージ2022年4月に引き渡し、特約は「引き渡しから3か月で契約不適合責任は終了」。2025年5月に買主が、売主が知っていた過去の自殺を知ったとします。この場合、売主が知りながら告げなかった事実のため、3か月の特約は効かない可能性があります。消滅時効は「知った時から5年」「行使できる時から10年」のうち早い方が基準になります。実際の結論は事情によって異なるため、弁護士への確認が必要です。

賃貸の場合と、買主・借主の立場で注意すること

事故物件だと知ったら、早めに動くことが大切です。
事故物件だと知ったら、早めに動くことが大切です。

賃貸借でも期間の考え方は基本的に同じ

賃貸借でも、貸主が告知すべき事案を伝えなかった場合、借主は契約不適合や説明義務違反を理由に、契約の解除や損害賠償を求めることがあります。期間についても、通知や消滅時効のルールが関係します。ただし賃貸は契約の内容や更新の有無で事情が変わるため、個別の確認が必要です。入居後に事故物件と知った場合の対応は事故物件と知らされなかったときの解約・返金で説明しています。

買主・借主は、知ったらすぐに記録と通知を

  • いつ、どこで、どのように知ったかをメモする
  • 契約書・重要事項説明書・告知書を確認する
  • 売主・貸主や不動産会社に、書面(内容証明郵便など)で事実を伝える
  • 早めに弁護士や消費生活センター(局番なしの188)に相談する

売主が亡くなった後はどうなる?

売主が亡くなった後に買主から責任を問われた場合、売主の責任(損害賠償などの義務)は、原則として相続人に引き継がれます。相続した家を売った方だけでなく、親が売った家について子どもが連絡を受けることもあり得ます。相続放棄をした場合の扱いなどは事情によって異なるため、司法書士や弁護士に確認してください。

売主・貸主は、期限ではなく事実で対応する

連絡を受けた売主・貸主は、「もう時効だ」と決めつけて無視するのは避けましょう。期間の判断は専門的で、思わぬ形で責任を問われることがあります。契約書類をそろえて、弁護士に相談してください。相手の言い分をよく聞き、事実関係を確認したうえで対応を決めることが、結果的に負担を小さくします。

将来の責任を心配しないために:次にすべきこと

一番の対策は、契約前に正しく告知し、書面に残すことです。
一番の対策は、契約前に正しく告知し、書面に残すことです。

正しく告知し、書面に残す

責任追及の期間を気にするよりも、契約前に告知すべき事実を伝え、書面に残すことが、将来のトラブルを防ぐ確実な方法です。告知書の書き方は重要事項説明書・告知書の記載例、売主の告知義務は事故物件の売却と告知義務で解説しています。

契約書類は長く保管する

売買契約書、重要事項説明書、告知書、やりとりの記録は、少なくとも消滅時効の期間を意識して長く保管しておきましょう。後で問い合わせがあったときに、何をどう伝えたかを示す大切な資料になります。相続した家を売った場合は、相続人の間で書類の保管場所を共有しておくと、誰かが連絡を受けたときにすぐ確認できます。

告知事項を前提に買う相手に売る

株式会社GEEZは、大阪府全域で事故物件・孤独死物件の買取を行っています。当社が直接買主になり、告知事項をうかがったうえで価格を決め、契約不適合責任は免責で買い取ります。売却後に「聞いていなかった」と責任を問われる不安を小さくできます。特殊清掃前や家財が残ったままでも相談でき、チラシやポータルサイトに掲載しないため近所に知られずに進められます。査定・相談は無料、秘密は厳守します。無料相談フォームまたはお電話(06-7777-4333、10:00〜19:00、水・日定休)でご相談ください。