事故物件の相続税評価は下がる?結論は「原則は通常どおり、例外的に下げられる場合がある」

相続税の評価は、国税庁の財産評価基本通達に沿って計算します。
相続税の評価は、国税庁の財産評価基本通達に沿って計算します。

相続税の評価は「実際に売れる値段」とは別に決まる

相続税を計算するときの不動産の価値(相続税評価額)は、国税庁の財産評価基本通達というルールで計算します。土地は国税庁が毎年公表する路線価(路線価がない地域は固定資産税評価額に倍率をかける倍率方式)、建物は固定資産税評価額をもとにします。この計算には、その家で人が亡くなったかどうかという事情は、ふつう含まれていません。そのため、事故物件でも、まずは周りの家と同じように評価額が計算されます。

一方で、実際の売却価格は下がりやすい

事故物件は、買主が心理的な抵抗を感じるため、相場より低い価格でしか売れないことが多いのが実情です。どれくらい下がるかは死因や発見までの状況、立地などで大きく違います。目安は事故物件はどれくらい安くなる?で解説しています。すると、「相続税の評価額は高いのに、実際には安くしか売れない」というずれが生まれます。このずれをどう扱うかが、事故物件の相続税評価で問題になる点です。

なお、相続税がかかるのは遺産の合計が基礎控除を超える場合だけです。実際には相続税がかからない方も多いため、まずは相続税がかかるかどうかを確かめ、かかる場合に初めて評価を下げられるかを検討する、という順番で考えると迷いません。

評価を下げられる可能性がある2つの考え方

考え方内容ハードル
利用価値が著しく低下している宅地の10%減額騒音・臭気・忌み等で取引金額に影響がある宅地について、該当部分の評価を10%下げる事故物件が当てはまるかは個別判断。路線価で考慮済みなら不可
不動産鑑定士の鑑定評価で申告通達どおりの評価が実態とかけ離れている場合に、鑑定評価額を時価として申告する鑑定費用がかかり、税務署に認められるとは限らない

どちらも「事故物件なら使える」というものではありません。使えるかどうかは、必ず相続税に詳しい税理士に確認してください。

相続税評価の基本:路線価・固定資産税評価額・基礎控除

固定資産税の納税通知書と路線価図があれば、おおよその評価額を確認できます。
固定資産税の納税通知書と路線価図があれば、おおよその評価額を確認できます。

土地は路線価、建物は固定資産税評価額

土地の路線価は、道路ごとに1㎡あたりの価格が決められていて、国税庁のホームページで誰でも見られます。土地の評価額は、おおまかには「路線価×面積」に、土地の形や奥行きなどによる補正を加えて計算します。建物は、市区町村が決めた固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になるのが基本です。固定資産税評価額は、毎年届く固定資産税の納税通知書(課税明細書)で確認できます。

分譲マンションの場合も、敷地の持分(敷地権)を路線価で、部屋(専有部分)を固定資産税評価額で評価するのが基本です。なお、2024年1月1日以後の相続からは、マンションの評価額と市場価格の差を調整するための補正が加わる見直しが行われています。建物の構造や築年数で計算が変わるため、マンションの事故物件は特に税理士に試算してもらうと安心です。

そもそも相続税がかかるかを確認する

相続税には基礎控除があり、遺産の合計がこの金額以下なら相続税はかかりません。基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。計算例:相続人が子ども2人なら、3,000万円+600万円×2人=4,200万円。預貯金や不動産などの合計がこれ以下であれば、原則として申告も不要です。ただし、後で説明する小規模宅地等の特例など、申告することが条件の特例を使う場合は、税額がゼロでも申告が必要です。

申告と納税の期限は10か月

相続税の申告と納税の期限は、亡くなったことを知った日(通常は亡くなった日)の翌日から10か月以内です。孤独死の場合は、亡くなった日と発見された日がずれることがあり、どの日から数えるかで迷うこともあります。警察の検視や死亡届の手続きで日付がどう扱われたかを確認し、税理士に伝えてください。孤独死の後の手続きの流れは孤独死の発見から葬儀までの流れにまとめています。

心理的瑕疵で評価を下げられる場合の考え方(国税庁の10%減額)

減額が認められるかどうかは、周辺の土地と比べた個別の事情で判断されます。
減額が認められるかどうかは、周辺の土地と比べた個別の事情で判断されます。

「利用価値が著しく低下している宅地」とは

国税庁のタックスアンサー(No.4617)では、付近の宅地に比べて利用価値が著しく低下していると認められる宅地について、その部分の評価額を10%減額できるとしています。対象として挙げられているのは、道路との高低差が著しい宅地、地盤に甚だしい凹凸がある宅地、震動が甚だしい宅地、そして騒音・日照阻害・臭気・忌み等により取引金額に影響を受けると認められる宅地などです。

事故物件が「忌み等」に当てはまるかは個別判断

事故物件の心理的な抵抗感が、この「忌み等」にあたると考える余地はあります。ただし、タックスアンサーには事故物件について明記されておらず、当てはまるかどうかは個別の判断になります。また、路線価や固定資産税評価額などが、すでにその事情を考慮して決められている場合は減額できません。認めてもらうには、「その事情によって実際に取引価格が下がっている」ことを具体的に説明できる資料が大切です。たとえば、不動産会社の査定書や、事故の内容・特殊清掃の記録などが考えられます。

建物部分や鑑定評価による申告

10%減額は土地(宅地)の評価の話で、建物は固定資産税評価額が基本です。通達どおりの評価が実際の価値と大きくかけ離れている場合には、不動産鑑定士に鑑定評価を依頼し、その金額で申告する方法が検討されることもあります。ただし、鑑定費用がかかるうえ、税務署が認めるとは限りません。評価を下げられたとしても、それで節税できる金額と鑑定費用・税理士報酬のどちらが大きいかも含めて判断することが大切です。

自己判断で評価を下げない根拠なく評価額を下げて申告すると、税務調査で否認され、追加の税金がかかるおそれがあります。減額を考えるときは、必ず相続税に詳しい税理士に相談してください。

計算例で見る:事故物件の評価と相続税の関係

評価額の差が相続税にどれくらい影響するかは、遺産全体の金額によって変わります。
評価額の差が相続税にどれくらい影響するかは、遺産全体の金額によって変わります。

計算例:10%減額が認められた場合

計算例:路線価で計算した土地の評価額が2,000万円、建物の固定資産税評価額が300万円の家があるとします。土地の全体について10%減額が認められれば、土地は1,800万円となり、評価額の合計は2,300万円から2,100万円に下がります。評価額が200万円下がっても、相続税が200万円減るわけではありません。減る税額は、遺産全体の金額と相続人の数で決まる税率によって変わります。遺産の合計が基礎控除以下なら、そもそも相続税はかからないため、減額の効果もありません。

小規模宅地等の特例が使えるかも確認する

亡くなった方が住んでいた家の土地は、一定の条件を満たす相続人が取得すると、小規模宅地等の特例で330㎡までの部分の評価額を80%減らせる場合があります。たとえば、配偶者が相続する場合や、同居していた子どもが相続して住み続ける場合などです。ただし、相続人が条件を満たさない場合や、申告期限までに売ってしまう場合など、使えないケースもあります。事故物件かどうかより、こちらの特例のほうが評価額への影響が大きいことも多いため、まず使えるかを税理士に確認しましょう。

評価額と売却価格の差が大きいときの考え方

事故物件で問題になりやすいのは、「相続税は評価額で計算されたのに、実際には大幅に安くしか売れなかった」というケースです。相続税の申告前に、不動産会社の査定や買取価格の提示を受けておくと、評価をどうするか税理士と相談するときの材料になります。査定の仕組みは事故物件の査定で解説しています。

相続した事故物件を売るときの税金と注意点

相続税と、売ったときの譲渡所得税は別の税金です。両方を見て判断しましょう。
相続税と、売ったときの譲渡所得税は別の税金です。両方を見て判断しましょう。

相続税を払った人は「取得費加算の特例」がある

相続した不動産を売って利益が出ると、相続税とは別に譲渡所得税がかかります。相続税を払った人が、相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売った場合、払った相続税の一部を取得費に加えられる特例があります。ただし、被相続人の居住用財産(空き家)の3,000万円特別控除とは、どちらか一方を選ぶ形になります。どちらが有利かは金額で変わるため、税理士に試算してもらってください。

売却の税率と取得費

譲渡所得税の税率は、売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば20.315%、5年以下なら39.63%です。相続した不動産は、亡くなった方が買った時期と取得費を引き継ぎます。昔の購入価格がわからない場合は、売却代金の5%を取得費とみなします。事故物件の売却では、特殊清掃や遺品整理の費用を譲渡費用にできるかなども論点になります。詳しくは事故物件の売却にかかる税金をご覧ください。

相続放棄を考えている場合は評価より先に判断を

事故物件の相続では、相続税より先に「そもそも相続するか」を決める必要がある場合があります。借金が多い、賃貸物件で損害賠償を求められているなどの事情があるときは、相続放棄が選択肢になります。相続放棄は、相続人になったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します。判断の考え方は親が孤独死したら相続放棄すべき?で解説しています。

次に何をすればいい?税理士に相談する前に準備すること

評価の判断材料をそろえておくと、税理士との相談がスムーズになります。
評価の判断材料をそろえておくと、税理士との相談がスムーズになります。

そろえておきたい資料

  • 固定資産税の納税通知書・課税明細書(建物と土地の評価額がわかる)
  • 登記事項証明書(土地の面積・所有者の確認)
  • 事故の内容がわかるもの(警察からの説明、死亡診断書・死体検案書の写しなど)
  • 特殊清掃・遺品整理の見積書や領収書
  • 不動産会社の査定書や買取価格の提示書

実際の売却価格の目安を知っておく

評価を下げる余地があるか、売却と相続税のどちらを先に考えるかを判断するには、「実際にいくらで売れるのか」という情報が欠かせません。株式会社GEEZは、大阪府全域で事故物件・孤独死物件・相続物件の買取を行っており、当社が直接買主になります。特殊清掃の前でも、遺品が残ったままでも査定できます。査定・相談は無料で、秘密は厳守します。ポータルサイトなどに載せないため、近所に知られずに進められます。

税理士と不動産会社、両方の意見を聞く

相続税の評価をどうするかは税理士、実際にいくらで売れるかは不動産会社が得意とする分野です。両方の意見を聞いてから決めれば、「評価は高いのに売れない」「売り急いで特例が使えなかった」という失敗を防げます。まずはお電話(06-7777-4333、10:00〜19:00、水・日定休)か相談フォームから、物件の状況をお聞かせください。