疎遠な親族の孤独死の連絡:やるべきこと・断れることの全体像

断れること・断れないこと
| 項目 | 考え方 |
|---|---|
| 遺体・遺骨の引き取り | 事情があれば断ることもできる。引き取り手がいなければ市町村長が火葬する |
| 葬儀を出すこと | 義務ではない。自分で葬儀社と契約すれば、その費用は契約した人が払う |
| 未払い家賃・原状回復費 | 相続人なら原則引き継ぐが、相続放棄をすれば相続人としては負わない |
| 連帯保証人としての支払い | 相続放棄をしても免れない(保証契約の内容による) |
| 自治体が行った火葬の費用 | 遺留金で足りない場合、相続人や扶養義務者に求められることがある |
感情と手続きを分けて考える
疎遠になった理由は人それぞれです。「最後くらいは見送りたい」と思う方もいれば、「関わりたくない」と感じる方もいます。どちらも自然な気持ちです。大切なのは、気持ちの問題と、お金や法律の問題を分けて考えることです。見送りたい気持ちがあっても、借金まで引き継ぐ必要はありません。逆に、関わりたくなくても、相続放棄の手続きはしておかないと不利になることがあります。
最初の連絡で慌てて約束しない
警察や大家さんからの電話で、その場で「引き取ります」「費用は払います」と約束する必要はありません。「確認して折り返します」と伝え、連絡先と担当者名、亡くなった方の住所、賃貸か持ち家かをメモしておきましょう。状況がわかってから判断しても、遅すぎることはほとんどありません。
連絡が来たらまず確認すること:相続人か、保証人か

自分は相続人か
相続人になる人は、民法で順位が決まっています。配偶者は常に相続人で、それに加えて次の順で相続人になります。
- 子(子が先に亡くなっていれば孫)
- 親などの直系尊属(子がいない場合)
- 兄弟姉妹(子も親もいない場合。兄弟姉妹が先に亡くなっていれば甥・姪)
たとえば、亡くなった叔父に子がいて、その子が相続放棄をしていなければ、甥や姪のあなたは相続人ではありません。ただし、先順位の人が全員相続放棄をすると、次の順位の人に相続権が回ってきます。「自分には関係ない」と思っていても、あとから相続人になることがある点に注意してください。
連帯保証人になっていないか
亡くなった方のアパートの賃貸借契約や借金で、昔あなたが連帯保証人になっていたことはないでしょうか。連帯保証人の責任は、相続とは別にあなた自身が負う義務です。相続放棄をしても消えません。ただし、2020年4月1日以降に締結した賃貸借契約の個人の連帯保証は、極度額(保証の上限額)の定めがないと無効です。請求を受けたら、契約書の写しを見せてもらい、弁護士に相談しましょう。
連絡が本物かを確かめる
親族の死亡を装って振り込みを求める詐欺の可能性もゼロではありません。電話で費用の振り込みを求められたら、相手の所属を確認し、代表番号にかけ直して確認しましょう。警察署や役所からの連絡であれば、公式の電話番号に折り返せば本物かどうかがわかります。
遺体の引き取りと葬儀:断ることはできる?

引き取り手がいない場合は市町村長が火葬する
墓地埋葬法9条では、埋葬や火葬を行う人がいない、または判明しない場合は、死亡地の市町村長が行うと定められています。事情があって遺体の引き取りや葬儀ができない場合は、そのことを警察や自治体の担当者に伝えましょう。無理に引き受けて、あとで費用や手続きの負担に困るよりも、正直に状況を伝えるほうが結果的に関係者の手間も少なくなります。
火葬費用を求められることがある
市町村長が火葬を行った場合、その費用については「行旅病人及行旅死亡人取扱法」が準用されます。同法11条では、費用はまず亡くなった方が遺したお金や有価証券から充て、足りなければ相続人の負担とし、相続人から弁償を受けられないときは扶養義務者の負担とする、と定めています。連絡を断ったからといって、費用の問題が完全になくなるとは限らないことは知っておきましょう。実際の扱いは自治体によって異なるため、担当窓口に確認してください。
「遺骨だけ引き取る」「葬儀は最小限に」という選択
葬儀には関われなくても、遺骨だけは引き取りたいという方もいます。また、通夜や告別式をせずに火葬だけを行う「直葬」で、費用と負担を抑えて見送る方法もあります。相続放棄をする予定でも、自分のお金で葬儀を出すことは問題ありません。葬儀の形式と費用、使える給付は孤独死の葬儀費用と形式で解説しています。
家賃・原状回復・片付けの費用は誰が負担する?

賃貸住宅だった場合
亡くなった方が賃貸住宅に住んでいた場合、賃貸借契約は相続人に引き継がれます。未払いの家賃、明け渡しまでの家賃、特殊清掃や原状回復の費用は、相続人が引き継ぐのが原則です。ただし、自然死で入居者に落ち度がない場合、どこまでの費用を負担すべきかは事情によって判断が分かれます。大家さんからの請求の考え方は賃貸で孤独死したら損害賠償は誰が払う?をご覧ください。
持ち家だった場合
亡くなった方の持ち家は相続財産になります。相続すれば家を売ったり活用したりできますが、固定資産税や管理の責任も負います。相続放棄をすれば家も引き継ぎませんが、放棄の時点で家を現に占有している場合は、次の相続人などに引き渡すまで保存の義務が残ります(2023年4月施行の改正民法940条)。疎遠な親族であれば、家を占有していないことが多いですが、鍵を預かるなど関わり方には注意しましょう。
「相続人の代表として」署名を求められたら
大家さんや業者から、費用の支払いを約束する書類や、残置物の処分に同意する書類への署名を求められることがあります。相続放棄を考えている場合、署名の内容によっては相続を認めたと受け取られるおそれがあります。内容がわからない書類には、その場で署名しないようにしましょう。
書類は持ち帰って内容を確認し、必要であれば弁護士・司法書士に見てもらってから返事をすれば十分です。大家さんにとっても早く解決したい事情があるため、「相続放棄を検討しているので、決まり次第連絡します」と伝えておけば、話し合いが止まってしまうことは避けられます。期限の目安を伝えておくと、相手も予定を立てやすくなります。
相続放棄の進め方:3か月はいつから数える?

期限は「相続人になったことを知った時」から3か月
相続放棄は、自分が相続人になったことを知った時から3か月以内に、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。疎遠な親族の場合、亡くなった日ではなく、警察などからの連絡で亡くなったことを知った時から数えるのが基本です。先順位の人の放棄で相続人になった場合は、そのことを知った時から数えます。財産の調査に時間がかかる場合は、期間を延ばす申立てもできます。
放棄の前にやってはいけないこと
- 亡くなった方の部屋から、価値のある物を持ち帰る
- 亡くなった方の預金を引き出して使う
- 家財や車を売ったり、処分したりする
- 借金を相続財産から返済する
こうした行為は、相続を認めた(単純承認)とみなされ、放棄ができなくなるおそれがあります。どこまでが許されるかは事情によるため、弁護士・司法書士に確認してください。
放棄したら、次の順位の親族にも知らせる
あなたが相続放棄をすると、相続権は次の順位の人に移ります。次の順位の親族は、突然相続人になったことを知らずにいるかもしれません。法律上の義務ではありませんが、放棄したことを次の順位の親族に知らせておくと、親族間のトラブルを防げます。相続放棄の判断については親が孤独死したら相続放棄すべき?でも詳しく解説しています。
相続する場合に知っておきたいこと

財産と借金を調べる
疎遠だった親族の場合、財産や借金の状況がまったくわからないことがほとんどです。通帳や郵便物、固定資産税の通知書などから、預金や不動産、借入の有無を確認します。信用情報機関への開示請求で、借入の状況を調べられることもあります。財産の行方の全体像は孤独死した人の財産はどうなる?をご覧ください。
財産と借金のどちらが多いかわからないとき
財産と借金のどちらが多いか判断できない場合、「限定承認」という方法もあります。相続した財産の範囲内でだけ借金を返す手続きで、財産が残れば引き継ぐことができます。ただし、相続人全員が共同で、3か月以内に家庭裁判所へ申し立てる必要があり、手続きも複雑です。利用を考える場合は、弁護士・司法書士・税理士に相談してください。
不動産を相続したら相続登記
家や土地を相続した場合、2024年4月1日から、取得を知った日から3年以内に相続登記をすることが義務になっています。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料の対象になります。遠方の家を相続した場合は、管理の負担も考えて、早めに売却などの方針を決めることをおすすめします。
遠方の家は、そのまま買い取ってもらう方法も
疎遠な親族の家は、遠方にあることが多く、片付けに何度も通うのは大きな負担です。家財が残ったままでも引き取ってくれる買取業者に相談すれば、片付けと売却をまとめて進められることがあります。孤独死のあった家の行方は持ち家で孤独死があった後、家はどうなる?で解説しています。
次に何をすればいい?連絡を受けた日にやること

連絡を受けた日のチェックリスト
- 連絡してきた人の所属・名前・連絡先をメモし、本物か確認する
- 亡くなった方の住所、賃貸か持ち家か、発見の状況を聞く
- 自分が相続人か、連帯保証人になっていないかを確認する
- 連絡を受けた日を記録する(相続放棄の3か月の起点になる)
- その場で費用の支払いや書類への署名を約束しない
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