マンションの孤独死、管理組合の役割の全体像

まずは「誰の財産か」「誰が判断するか」を分けて考えます。
まずは「誰の財産か」「誰が判断するか」を分けて考えます。

専有部分は所有者(相続人)、共用部分は管理組合

分譲マンションは、各住戸の室内である専有部分と、廊下・階段・エレベーター・外壁・配管の本管などの共用部分に分かれています。専有部分は区分所有者の財産で、所有者が亡くなれば相続人が引き継ぎます。共用部分は区分所有者全員のもので、管理組合が管理します。孤独死があったときも、この区分けにそって対応する人が決まります。

役割分担の早見表

立場主な役割
管理組合(理事会)警察への通報、共用部分の清掃・消毒の判断、相続人の把握、管理費の請求、住民への必要な範囲の説明
管理会社管理組合の委託の範囲で、通報・連絡・業者手配・記録などの実務を支援
相続人(遺族)室内の特殊清掃・遺品整理・原状回復、管理費の精算、相続手続き、住戸の売却などの判断
近隣住戸の所有者・住人異変の連絡、自室への影響の確認・申告

賃貸に出していた住戸の場合

亡くなったのが賃借人(部屋を借りていた人)の場合は、まず住戸の所有者(貸主)と、その管理会社が対応の中心になります。管理組合は所有者と連絡をとり、共用部分への影響の確認を進めます。賃貸住戸での対応は大家向け孤独死対応マニュアルも参考にしてください。

異変に気づいたとき:通報と立ち入りのルール

安否が気になるときは、自分たちで開けずに警察へ連絡します。
安否が気になるときは、自分たちで開けずに警察へ連絡します。

よくある異変のサイン

  • 廊下やドアの周辺で、これまでにないにおいがする
  • 郵便受けや新聞受けに郵便物がたまっている
  • 夜になっても照明がつかない、または昼夜ずっとついたまま
  • 玄関や窓のまわりにハエなどの虫が集まっている
  • 管理費の引き落としが急にできなくなった

まず家族に連絡、つながらなければ警察へ

管理組合や管理会社に緊急連絡先が届けられていれば、まずそこに連絡します。つながらない、または強い異臭などで命に関わるおそれがあるときは、110番(急を要しない相談は警察相談専用電話 #9110)に連絡し、警察の判断で室内を確認してもらいます。明らかに倒れている様子が見えるなど急を要する場合は119番です。疑いがあるときの通報の仕方は孤独死が疑われるときのサインと通報先で詳しく解説しています。

管理組合が独断で鍵を開けない

管理会社が合鍵を預かっていても、所有者の同意なく室内に入ることは、トラブルの原因になります。国土交通省の「マンション標準管理規約」には、災害や事故などで緊急に立ち入らないと共用部分や他の住戸に重大な影響が出るおそれがあるときに、理事長が専有部分に立ち入れるという考え方が示されていますが、実際の運用は各マンションの管理規約によります。安否確認の場面では、警察の立ち会いのもとで対応するのが基本です。

発見後の流れ:警察・相続人・清掃

警察の対応が終わったあと、室内の片付けは相続人の判断で進みます。
警察の対応が終わったあと、室内の片付けは相続人の判断で進みます。

警察の対応が終わるまで

亡くなった方が見つかると、警察が死因や事件性の有無を確認します。その間、室内には入れません。身元の確認や、親族への連絡も警察が行います。管理組合は、警察から問い合わせがあれば、わかる範囲で居住者の情報や緊急連絡先を伝えます。発見から葬儀までの流れは孤独死の発見から葬儀までの流れにまとめています。

相続人と連絡をとる

警察の対応が終わると、室内の清掃や遺品整理は、原則として相続人が手配します。管理組合は、警察や親族を通じて相続人の連絡先を確認し、室内の特殊清掃をできるだけ早く行ってもらうよう依頼します。発見が遅れた場合、においや害虫は時間とともに広がるため、早めの対応が他の住戸を守ることにつながります。

共用部分の清掃・消毒

廊下や玄関まわり、排水の共用管などに影響が出ている場合は、管理組合の判断で共用部分の清掃・消毒・消臭を行います。費用はいったん管理組合が負担し、相続人に請求できるかを検討する流れが一般的です。請求の可否や範囲は事案によるため、管理会社や弁護士に相談してください。特殊清掃の内容は特殊清掃とはを参考にしてください。

相続人と連絡がとれない、または相続人が室内の清掃に応じない場合でも、管理組合が専有部分の清掃を代わりに行うことは原則としてできません。においや害虫の被害が他の住戸に広がっている場合の対応は、管理規約の規定と事情によって変わるため、管理会社を通じて弁護士に相談しながら進めてください。対応の経過は、日付と内容を記録に残しておくと、後の費用請求や総会での報告に役立ちます。

管理費・修繕積立金の滞納と相続人がいない場合

相続人の対応によって、管理組合が取るべき手続きが変わります。
相続人の対応によって、管理組合が取るべき手続きが変わります。

管理費は相続人に請求する

所有者が亡くなっても、管理費や修繕積立金の支払い義務はなくなりません。亡くなった時点までの滞納分と、その後の管理費は、住戸を相続した人に請求します。相続人が決まるまでの間は、相続人全員に連絡をとって支払いを求めることになります。また、区分所有法では、管理費の滞納分は住戸を買った人(買主)にも請求できるとされているため、住戸が売却されれば、その時点で精算されることが多くあります。

相続人が全員相続放棄したら

相続人が全員相続放棄をした場合や、そもそも相続人がいない場合は、住戸の管理者がいない状態になります。このとき管理組合は、利害関係人として家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てることができます。清算人が住戸を売却し、その代金から滞納分が支払われる流れです。ただし、申立てには予納金などの費用と時間がかかるため、理事会・総会で方針を話し合い、弁護士に相談して進めましょう。

住戸を相続する人が決まらない間も、共用部分の修繕や保険料の支払いは続きます。滞納が長引くほど回収が難しくなるため、相続人の調査や連絡は、早い段階で管理会社に依頼しておくのが現実的です。

相続放棄した人にも残る「保存義務」

2023年4月施行の改正民法では、相続放棄をした人でも、その時点で住戸を現に占有していた場合は、次の相続人や相続財産清算人に引き渡すまで、その財産を保存する義務があるとされています。どこまで対応を求められるかは事案によるため、具体的には専門家に確認してください。相続放棄の基本は親が孤独死したら相続放棄すべき?で解説しています。

近隣住戸への影響と説明の仕方

必要な情報は伝えつつ、亡くなった方とご遺族への配慮を忘れないことが大切です。
必要な情報は伝えつつ、亡くなった方とご遺族への配慮を忘れないことが大切です。

隣・上下の住戸に出やすい影響

  • 換気口や配管のすき間、ベランダを伝ってくるにおい
  • ハエなどの害虫の侵入
  • 体液が床から下の階へしみ出す(構造や発見までの期間による)

影響が心配な住戸には、管理会社から状況を確認し、必要に応じて清掃業者に点検してもらいます。下の階の天井にしみが出たなどの被害は、亡くなった方の住戸の相続人との間で、修理費の負担を話し合うことになります。マンションの保険(個人賠償責任保険や施設賠償の特約など)が使えるかも確認しましょう。保険が使えるかどうかは契約内容によるため、管理組合の保険と、各住戸の火災保険の両方を保険会社に確認してください。

住民への説明は「必要な範囲」で

住民から「何があったのか」と聞かれることがありますが、亡くなった方の死因や詳しい状況を管理組合が広く伝える必要はありません。掲示や回覧で知らせる場合も、「ご逝去があり、共用部分の清掃を行います」程度にとどめ、部屋番号や氏名、死因は書かないのが一般的な配慮です。個人情報やプライバシーの扱いは管理会社と相談して決めましょう。

他の住戸は「事故物件」になるのか

国土交通省のガイドラインでは、隣接住戸や、日常生活で通常使用しない共用部分での死は原則として告知の対象外とされています。つまり、隣の部屋で孤独死があったことで、自分の住戸を売る・貸すときに告知が必要になるのは、原則として事件性や周知性が高い場合などに限られます。詳しくは事故物件のマンション、違う部屋なら告知は必要?をご覧ください。

管理組合が今からできる孤独死への備え

発生後の負担を減らすには、平時のルールづくりが効果的です。
発生後の負担を減らすには、平時のルールづくりが効果的です。

緊急連絡先の届け出と更新

居住者名簿や緊急連絡先の届け出を、定期的に更新してもらう仕組みをつくっておくと、異変があったときに家族へすぐ連絡できます。一人暮らしの高齢の方には、本人の同意を得たうえで、地域包括支援センターや見守りサービスと連携する方法もあります(孤独死を防ぐ見守りサービス)。

管理規約・細則の確認

  • 緊急時の専有部分への立ち入りの規定があるか、手順は明確か
  • 共用部分の清掃費用を誰が負担し、どう請求するか
  • 管理費の滞納が続いたときの対応手順
  • 住民への周知の方法と、個人情報の扱い

声かけと情報共有

理事会や管理員が、郵便受けのたまり具合や、長く姿を見ない住人に気づいたら共有する、といった日常の小さな気づきが早期発見につながります。ただし、見守りは本人の意思を尊重することが前提です。干渉しすぎず、困ったときに相談できる関係をつくることを目指しましょう。総会や防災訓練などの機会に、住民どうしが顔を合わせる場をつくることも、孤立を防ぐ一歩になります。大阪市など多くの自治体では、高齢者の見守りや地域の相談窓口を設けているので、管理組合として連携先を調べておくのもよい方法です。

住戸を相続したご遺族が次にすること

管理組合への連絡と並行して、住戸をどうするかを考えましょう。
管理組合への連絡と並行して、住戸をどうするかを考えましょう。

管理組合・管理会社への連絡と精算

マンションの住戸を相続したら、管理会社に連絡して、相続人の連絡先、管理費の引き落とし口座の変更、滞納分の精算について相談します。室内の特殊清掃や遺品整理の予定も伝えておくと、近隣への説明がしやすくなります。相続登記は2024年4月1日から義務化されており、取得を知った日から3年以内に申請が必要です。

住まない住戸は早めに方針を

だれも住まない住戸でも、管理費・修繕積立金・固定資産税はかかり続けます。発見が遅れて特殊清掃を行った住戸は、売却時に告知が必要になるため、一般の仲介では買い手が見つかりにくいことがあります。区分マンションの売却の進め方は事故物件のマンションを売却するにはで解説しています。

株式会社GEEZは、大阪府全域で孤独死や事故のあったマンション住戸を当社が直接買主となって買い取っています。特殊清掃の前でも、家財が残ったままでも相談でき、査定・相談は無料、秘密厳守です。チラシやポータル掲載をしないため、同じマンションの方に知られにくい売り方ができます。無料相談フォーム、またはお電話(06-7777-4333/10:00〜19:00、水・日定休)でご相談ください。