孤独死対策の全体像:3つの備えと4つの立場

対策は「健康」「つながり」「手続き」の3つ
孤独死の対策というと見守りサービスが思い浮かびますが、それだけではありません。健康の備えは、急な病気を起こしにくくすること。つながりの備えは、異変があったときに早く気づける人や仕組みを持つこと。手続きの備えは、もし亡くなったときに家族や大家さんが困らないよう、連絡先や財産、住まいのことを整理しておくことです。この3つを組み合わせると、本人も家族も安心して一人暮らしを続けられます。
本人・家族・大家・地域で役割を分ける
孤独死対策は、誰か一人が頑張っても続きません。本人は健康管理と「困ったら言う」こと、家族は定期的な連絡と緊急時の確認、大家さんは入居時の連絡先の確認や見守りの導入、地域は挨拶や声かけ、とそれぞれができる範囲で分担するのが現実的です。
| 立場 | 主にできること |
|---|---|
| 本人 | 健康診断・持病の治療、室温の管理、連絡の約束、エンディングノートの作成 |
| 家族 | 連絡の頻度を決める、見守りサービスの検討、合鍵と緊急時の確認方法を決める |
| 大家・管理会社 | 緊急連絡先の確認、見守りサービス・孤独死保険の導入、残置物の取り決め |
| 地域・行政 | 民生委員・地域包括支援センターによる見守り、声かけ、配食などの福祉サービス |
目標は「8日」より前に気づくこと
内閣府は、自宅で亡くなった一人暮らしの方のうち死後8日以上たって見つかった方を孤立死の目安として推計しています。警察庁のデータでは、2025年にこうした方が2万2,222人いました。まずは「1週間連絡がなくても誰も気づかない」状態をなくすことを目標にすると、何をすればいいかが具体的になります。数字の詳細は孤独死の統計で解説しています。
本人ができる孤独死対策

健康の備え:受診・服薬・室温の管理
孤独死の直接の原因は、心臓や脳の病気など急な体調の変化が多くを占めます。定期的な健康診断を受ける、持病の薬を自己判断でやめない、夏はエアコンを使い冬は脱衣所や浴室を暖める、といった基本が一番の対策です。お酒を飲んだ直後の入浴や、長風呂も避けましょう。原因については孤独死の原因でくわしく解説しています。
つながりの備え:毎日の「生存の合図」をつくる
毎朝家族にメッセージを送る、決まった時間に電話をする、近所の方と朝の挨拶を交わす、といった毎日の小さな合図を決めておくと、途切れたときに異変に気づいてもらえます。趣味の集まりやデイサービス、地域のサロンなど、週に何度か人と会う予定をつくることも、立派な対策です。
手続きの備え:エンディングノートと連絡先
かかりつけの病院、服用している薬、家族や友人の連絡先、預金口座や保険、住まいの契約などを一冊のノートにまとめておくと、もしものときに家族が手続きで困りません。冷蔵庫や玄関の内側など、見つけてもらいやすい場所に緊急連絡先を貼っておくのもよい方法です。財産の行き先を決めておきたい方は、遺言書の作成を弁護士や司法書士に相談してください。
家族ができる孤独死対策

連絡の頻度と、つながらないときの行動を決める
大切なのは連絡の回数よりも、連絡がつかなかったときに誰がどう動くかを決めておくことです。たとえば「毎日夜に既読がつかなければ翌朝電話、つながらなければ近くに住む親族か管理会社に確認を頼む」というように、段階を決めておきます。親との話し方や頻度の考え方は離れて暮らす親の孤独死を防ぐ方法で紹介しています。
見守りサービスを組み合わせる
家族だけで毎日確認するのが難しい場合は、見守りサービスを使います。電気やポットの使用状況で異変を知らせるセンサー型、定期的に人が訪ねる訪問型、自動で電話がかかってくる電話型など、さまざまな種類があります。選び方は孤独死の見守りサービスの種類と選び方をご覧ください。
合鍵と地域の相談先を確保する
遠方に住んでいると、異変があってもすぐに駆けつけられません。近くに住む親族や信頼できる方に合鍵を預ける、親が住む地域の地域包括支援センターの連絡先を控えておく、といった準備をしておきましょう。地域包括支援センターは高齢者の総合相談窓口で、介護や見守りについて相談できます。
大家・管理会社ができる孤独死対策

入居時に緊急連絡先と見守りの方法を決める
高齢の方や一人暮らしの方が入居するときは、緊急連絡先を必ず確認し、定期的に更新してもらいましょう。見守りサービスの利用を入居条件の一つにする、管理会社が定期的に様子を確認する、といった方法もあります。大家さん向けの入居時の予防策は大家ができる孤独死予防でくわしく解説しています。
残置物の取り決めと孤独死保険
国土交通省は2021年6月に「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を公表しています。入居者が亡くなったときに、賃貸借契約の解除や部屋に残された家財の処理を、あらかじめ決めた受任者が行えるようにする仕組みです。あわせて、家賃の損失や原状回復の費用に備える孤独死保険への加入も検討しましょう。
連帯保証人の極度額に注意
2020年4月1日以降に結ばれた賃貸借契約で、個人が連帯保証人になる場合は、保証の上限額(極度額)を定めていないと保証契約が無効になります。古い契約書の書式を使い続けていると、もしものときに保証人に請求できないことがあります。契約書の内容は、管理会社や専門家に確認してください。
地域・行政の孤独死対策を活用する

民生委員・地域包括支援センター
地域には、一人暮らしの高齢者を訪ねて相談に乗る民生委員や、高齢者の暮らし全般の相談を受ける地域包括支援センターがあります。本人が支援を嫌がる場合でも、家族から「心配なので様子を見てほしい」と相談することができます。
自治体の見守り事業(大阪市の例)
大阪市では、各区の社会福祉協議会に「見守り相談室」を置き、福祉の専門職が孤立しがちな方を訪ねて支援につなぐ取り組みを行っています。同意を得た方の名簿を地域の見守り活動に生かす仕組みもあります。内容や窓口は区によって違うため、住んでいる区の社会福祉協議会や区役所に確認してください。大阪市外でも、多くの自治体が緊急通報装置の貸し出しや配食サービスなどを行っています。
孤独・孤立対策推進法で相談先が広がっている
2024年4月1日に「孤独・孤立対策推進法」が施行され、国と自治体が孤独・孤立の対策に取り組むことが法律で定められました。高齢者に限らず、現役世代の孤立も対象です。困ったときに相談できる窓口は、今後さらに整っていく見込みです。
今日から始める孤独死対策チェックリスト

本人・家族で確認したいこと
次の項目を、本人と家族で一緒に確認してみてください。チェックが付かない項目が、これから取り組む対策です。
- 毎日、または2〜3日に1回の連絡の約束がある
- 連絡がつかないときに確認に行く人(近くの親族・知人)が決まっている
- 合鍵を預けている人がいる
- 親が住む地域の地域包括支援センターの連絡先を控えている
- かかりつけの病院と服用中の薬がわかる
- エアコンや暖房が使える状態で、実際に使っている
- 緊急連絡先を家の中のわかりやすい場所に貼っている
- 預金口座・保険・住まいの契約がどこにあるか家族が知っている
大家・管理会社で確認したいこと
- 入居者の緊急連絡先が最新になっている
- 見守りサービスや定期的な安否確認の方法がある
- 孤独死保険や家財保険の特約で費用に備えている
- 残置物の処理について入居時に取り決めている
- 連帯保証人を付ける契約に極度額を定めている
優先順位の付け方とよくある失敗
迷ったら、まず「連絡がつかないときに確認に行く人を決める」ことから始めてください。どれだけ見守りの仕組みを整えても、最後に様子を確かめに行く人がいなければ発見は早まりません。次に、遠方の家族なら見守りサービス、大家さんなら緊急連絡先の更新と保険の確認、と立場に合わせて広げていきましょう。
あわせて、次のような失敗に気をつけてください。
- 本人の気持ちを置き去りにする:いきなりカメラを付けたり毎日の報告を強く求めたりすると、監視されていると感じて嫌がられます。「もしものときに早く助けに行けるように」と目的を伝え、本人が負担に感じない方法を一緒に選びましょう。
- 通知を受ける人が決まっていない:見守りサービスを契約しても、異常の通知が届いたときに誰が確認に行くのかが決まっていなければ意味がありません。通知先を複数にする、駆けつけ対応のあるサービスを選ぶなど、通知のあとの行動まで決めておきます。
- 異変のとき自分で無理に入ろうとする:窓を割ったり鍵を壊したりして中に入るのは危険です。まず警察や管理会社に連絡しましょう。目安は孤独死が疑われるときのサインと通報先にまとめています。
孤独死対策の次に考えておきたいこと

住まいの将来を家族で話し合う
一人暮らしの親が持ち家に住んでいる場合、もしものときに家をどうするかを話し合っておくと、相続のときに家族が迷わずにすみます。相続登記は2024年4月1日から義務になり、取得を知った日から3年以内に申請が必要です。空き家になった後の放置のリスクは孤独死後の空き家で解説しています。家の名義が誰になっているか、ローンが残っていないか、共有名義になっていないかといった点を、元気なうちに確認しておくだけでも、後の手続きはずっと楽になります。とくに祖父母の代から名義が変わっていない家は、相続人が増えて話し合いが難しくなりやすいので、早めに司法書士へ相談しておくと安心です。
もしものことがあったら、まず落ち着いて手続きを
ご家族が孤独死で亡くなった場合は、警察の確認、葬儀、役所の手続き、部屋の片付けと続きます。流れは孤独死の発見から葬儀までの流れ、相続の判断は親が孤独死したら相続放棄すべき?をご覧ください。法律や税金の判断は、弁護士・司法書士・税理士に確認してください。
家の扱いに困ったらご相談ください
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